クラウドファンディング Kickstarterとは何か?(14)
Kickstarterについて説明してきた今回の記事も終わりに近づいてまいりました。
残っている大きなテーマは、堅苦しい話になりますが、参加者の責任についてです。
以下の内容は主にKickstarterのウエブサイトの”Term of Use”を筆者が解釈したものです。
ここでの登場人物は、クリエイター、支援者そして運営主体であるKickstarterです。
おおまかにいうと、クリエイターと支援者との間では、プロジェクトが成立することで、後者は前者に対してプレッジを支払う義務を負い、他方、後者は前者にリワードを提供する義務を負う契約関係が成立することになります。
では、Kickstarterはどうかというと、クリエイターがプロジェクトを発表する場を提供し、プレッジを募って支援者から集金はするけれど、プロジェクトの実行に関してはクリエイターが全責任を負い、クリエイターと支援者との間のトラブルには一切責任を負いませんという立場を貫いています。
すなわち、プロジェクトに関する保証、Kickstarterの使用、誤用により生じた損害の賠償、・プレッジの返金、プレッジの未収額の補てんといったことは、一切いたしませんということです。
一方で、運営主体として、ウェブサイトやサービス内容の変更、参加資格の決定・アカウントの削除、プレッジの取消、プロジェクトの拒絶・取消・介入・削除は理由を問わず一方的に行いえるものと強い権利を留保しています。
上記を読むとずいぶん高飛車だなぁという気もしますが、立場上は当然と言えば当然でしょう。何かあったときのリスクヘッジとしてはこうなるのですが、運営主体としてクリエイターと支援者が安心して参加でくる場を維持するよう努めることは当然ですので、ウェブサイトの”Trust & Safety”では、以下のことはKickstarterの役割として掲げています。
・プラットフォームの様子やコミュニティからのレポートを注視する
・アルゴリズムやツール用いて不正な使用を監視する
・問題が生じた場合是正を求めたり、不正使用を認めた場合利用を停止すること
クリエイターと支援者の間では、契約が成立し、支援者はプレッジを支払い、クリエイターはその見返りにリワードを提供する義務を負うこととなります。Kickstarterの場合、両者の関係は売買というより寄付に近いものになっているようです。ベンチャー企業が新製品をリワードとして提供するプロジェクトの場合、実体は商品の売買とあまり変わらないのですが、通常のネット上のマーケットプレイスとの決定的な違いはKickstarterが想定している商品は、プレッジを募っている段階ではまだこの世に存在しないもので、お金さえあればきっと作れるものなのだけど、もしかすると予想外にコストや時間がかかったり、最悪やっぱりできませんでしたとなるリスクを含んだものである点です。そこで支援者に対しては、”Term of Use”の中で次のように警告しています。(4.How Project Workの第5パラグラフより。筆者訳。)
「支援者がプロジェクトを支援するとき、何か新しいものを創作する手助けをしているのであって、既に存在しているものを注文しているのではないことを理解しておく必要があります。よって、変更や遅れがあるかもしれませんし、当初約束したとおりにプロジェクトを完了させることができない何等かの事情が発生する可能性があります。」と警告しています。
だからといってクリエイターが容易に免責になることはないし、義務の不履行は法的手段に訴える対象にもなります。 履行困難に陥ったクリエイターは最善のあらゆる合理的手段をもって支援者のために実行可能な最善の代替案をみつけることが求められ、唯一以下の条件を満たした場合のみ救済され、義務が履行されたとみなされるとされています。(同第6パラグラフ)
・すでに行われたこと、使用された資金、計画通りに完了できなくなった理由の説明を掲示すること
・支援者に提示された時間枠内で勤勉、誠実にプロジェクトを最善の結果に導く努力をすること
・資金が適正に使用されたこと及び約束どおりプロジェクトを完了させるためのあらゆる合理的努力をした旨主張できること
・正直にふるまい、支援者に対して重要な虚偽の陳述を行っていないこと
・リワードを受け取っていない支援者に対しては残存する資金を拠出したプレッジに比例して返還するか、プロジェクトを異なる形で完成させるためにどのように残存する資金を使用するか説明すること
第1回で述べたようにリワードを伴うタイプのクラウドファンディングを日本語の分類では「購買型」と呼び、実際にとある日本のクラウドファンディングでは、売買契約であることが明記されていました。実際ベンチャー企業による利用の場合、実体は商品の売買と変わらないことも多く、売買と割り切った方がすっきりするかもしれません。また、ネット上で見知らぬ者同士の間でお金が動くので、十分な消費者保護への配慮も必要です。ですので、どちらかが正しいとかどちらが優れているということではないと思います。ただし、詐欺行為やあまりに無責任な振る舞いから支援者を保護することはもちろん必要ですが、ベンチャー企業の資金調達手段と位置づけからすれば、通常の商品売買と異なり、プロジェクトが遅延したり、仕様の変更を余儀なくされたり、最悪の場合は断念せざるを得ない等のリスクを本来的に伴うものなので、そのことを充分に認識した上で参加する意識を定着させることも、クラウドファンディングの健全な発展のために大切なのではないと思います。(つづく)
2014/11/07| 8:13 PM| カテゴリー:起業
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