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クラウドファンディング Kickstarterとは何か?(13)

ベンチャー企業にとってのKickstarter

さて、以上、数回にわけてKickstarterの概要を説明してまいりました。第2回の歴史のところで触れたように創立者の音楽好きが高じてできあがった仕組なので、アーティステックな活動を資金的に支援する場としての色彩がいまでも色濃く残っており、そのせいかビジネス・お金儲けが行われる場という色合いがでることを避けているようにも感じられるのですが、私のようなビジネスの世界に身をおく人間としては、ベンチャー企業の資金調達の手段としてKickstarterをはじめとするクラウドファンデングに注目しているところです。

クラウドファンディングが新たな資金調達の手段として注目を集めているのは、

1.従来ベンチャー企業に対するリスクマネーの主な供給者はベンチャーキャピタル(VC)だったが、シード・アーリーステージでの利用はハードルが高かったこと、

2.投資家にとっても、将来有望なベンチャー企業の株式へのアクセスが極めて限定された、
という問題への解決策になり得る点でしょう。

そこであらためて新たな資金調達の手段という側面からKickstarterを眺めてみるとどうでしょうか。これまで話題性のあるイノベーティブな新商品を数多く登場させて世間を賑わせてきたといっても、Kickstarter全体の中での位置づけとしては、スタートアップ企業の新商品が主に登録されていると思われカテゴリーであるテクノロジーやゲームのプロジェクト数は第3回の統計でみたとおり全体の11.5%と非主流派です。また、金融や専門的サービス、一般の人々に馴染みのないB2BビジネスなどKickstarterでは扱えないか、扱いづらい業種もたくさんありますし、資金調達の形態もリワードに紐づいたプレッジを集める方式に限られているので、明示的に制限されていないとしても調達できる金額やその用途にもおのずと限界が生じることになると思われます。ですので、ベンチャー企業の資金調達の手段としてみた場合、新しくて面白くて、確かに使える手段ではあるけれど、現状ではまだまだ物足りないところも多いのではないでしょうか。

それでも資金を必要としている人と魅力ある投資対象を探している人をインターネット上でマッチングさせる仕組みや、企業と出資者との関係或いは生産者と消費者との関係を利害関係が真っ向から対立する二者としてではなく、ともに同じ方向を向いてプロジェクトに参加するコミュニティの構成員としてとらえる考え方はビジネスの中でも今後大いに支持されるでしょう。その中で、よりビジネスにフォーカスした購買型クラウドファンディングやエクイティ型のクラウドファンディングがますます発展してゆくことでしょう。

Kickstarterをビジネス用途で使用する場合、資金調達という目的もさることながら、新商品や会社の活動の有効なプロモーション手段となります。
別にお金に困っていない人がやってはいけないというきまりはないので、極端な話、資金的には全くニーズはないけれど、とにかくこの新商品を売りたいからKickstarterを使うということは可能です。むしろ、可能性としては、このように資金調達を意図しないKickstarterの利用は十分あり得ますが、逆に、新商品や企業の活動のプロモーションを全く意図しないKickstarterの利用というのはちょっと考えられないかもしれません。

エベレット・M・ロジャース教授が提唱したイノベーションに関する理論では、新商品購入に対する反応の早い順に消費者を
1.イノベーター
2.アーリーアダプター
3.アーリーマジョリティー
4.レイトマジョリティー
5.ラガード

の5つに分類しています。

Kickstarterには、まだ世の中に出回ってなくて本当に使えるものかどうかリスクはあるけれど、とにかくクールな商品を他人に先んじて手に入れたいと思っている人たち、すなわち上記の中ではアーリーアダプターまでの人たちがやってくるので、こうした人たちをターゲットにするにはうってつけであるわけです。もちろんKickstarterに登録することのみでは大きなプローモーション効果を期待できないことは第11回で述べたとおりなのですが、スタートアップ起業家にとってはバイラルマーケティングの手法を駆使したり、メディアに売り込みをかけたり、イベントを企画したりといったマーケテイング手法はどの道やらなければならない当然必要なマーケティング活動ですので、Kickstarterを取り込むことでキャンペーンを盛り上げることもできるし、或いは商品を受注して代金を決済するマーケットプレイスと割り切って使っても構わないのです。アーリーアダプターの間で商品が受け入れられたことが確認され、アーリーマジョリティーとの間に横たわる溝(キャズム)を飛び越えていよいよ本格的に事業を拡大しようという段階になる頃には新たな資金調達のニーズが生まれ、今度はVCの登場になるかもしれませんが、既に市場で熱狂的に受け入れられた実績があればVCにとっても受け入れやすいでしょう。(つづく)

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