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クラウドファンディング Kickstarterとは何か?(1)

起業に伴う資金調達の新たな手法として最近注目を集めているクラウドファンディング。 そのクラウドファンディングの中でも世界最大規模のプラットフォームとして特に知られている”Kickstarter”がどういうものか、連載にて説明致します。 (クラウドファンディング関連の書籍はまだ日本ではあまりみかけませんが、今年出版された山本純子著「入門 クラウドファンディング」(日本実業出版社)は優れた内容であり、大いに参考にさせてもらっています。また、Kickstarterの実情については、Don Steinberg 2012 “The Kickstarter Handbook, Don Steinberg”, Quick Booksを参考にしています。)

まず、クラウドファンディングの定義についてですが、ウィキペディアをそのまま引用すると「不特定多数の人が通常インターネット経由で他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うことを指す、群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語である。」とあります。 前述の山本純子氏の著書では、”crowdfunding”という言葉が最初に登場したのは2006年ということらしく比較的新しいものですが、概念自体は古くからあるものと説明されていて、昔からあった類似の資金調達の方法の例としてお寺の「勧進」という行為があげられています 。この「勧進」というのは今でも行われていて、私の実家のある奈良の有名な「興福寺」のHPをみると、「中金堂再建勧進のお願い」というページがあり、60億円の費用を賄うため「丸瓦、平瓦 1枚 1,000円」から「棟木材 1口 100,000円」まで広く一般からの寄付を求めています。Kickstarterのサイトでも、もともと芸術家やミュージシャンのクリエイティブな活動を支援する目的で創設されただけあって、モーツアルトやベートーヴェンも裕福なパトロンだけでなく”Subscriber”と呼ばれる少額の資金提供者からも支援を募っていたと類似の行為が古くからおこなわれていたことが紹介されています。

そうはいっても今話題のクラウドファンディングは、何と言ってもインターネット普及があってこそのものですから冒頭のウィキペディアの定義のとおり、インターネットを経由する資金調達の仕組みと限定しても何ら間違いではないと思います。定義から読み取れるそのほかの特徴点としては、資金提供者は不特定多数であること、一方、資金を集める側についてどういう属性をもっていなければならないとか資金の用途について特段限定されていないこともあげられるでしょう。さらに、これはクラウドファンディングの本質に関わるものではないと思いますが、現在では、インターネット上で資金を求める側と提供する側をマッチングさせるサイト(プラットフォーム)をビジネスとして提供している事業者が数多くあり、通常はこうしたプラットフォーム上で行われている資金調達のことを差していると考えても差し支えないと思います。

さて、このように古くて新しいクラウドファンディングですが、その発展とともにいくつかの類型が登場しています。いろいろな分類の仕方があるのでしょうが、政府の消費者委員会から2014年2月25日付で公表されている「クラウドファンディングに係る制度整備に関する意見」の中では、「寄付型」・「購入型」・「投資型」の三つに大別されるとあるので、我が国では、これが標準分類になるのかもしれません。一方海外ではというと、マス・ソリューション社の2012年版の”Crowdfunding Industry Report”では、Donation-based (寄付型に対応)、Reward-based (購入型に対応)、Equity-based (投資型の一類型、株式型)及びLending-based (投資型の一類型、融資型)の4つに分類しています。ウェブで見られる記事などではこのように4分類する例も比較的多くみられ、個人的には今後株式型が重要になってくることを見据えると、個人的にはこちらの方がわかりやすいように思っています。

この4分類の中で、起業家・ベンチャー企業の資金調達方法として注目を集めているのは株式型でしょう。アメリカでは2012年に成立した通称JOBS法による法整備により今後本格的に活用が期待されていますし、我が国でも2014年5月にアベノミクスの成長戦略の一環で改正金融商品取引法が成立し、いよいよ2015年からスタートする見通しと、まさにホットなテーマであり当分目が離せません。

株式型も気になるところではあるのですが今回の記事のテーマは、さきほどの3分類の中では「購入型」に分類されるKickstarterです。まず、注意しておいた方がよいかなと思うのは、「購入型」と「寄付型」との違いは、資金提供に対して何等かの見返りがあるか全くないかの違いなのですが、この「見返り」は寄付や支援に対するお礼といった意味合いのものも含まれていて、必ずしも一般通念上の商品・サービスの売買にとどまるものではないということです。実際には純粋な慈善事業以外のプロジェクトは、何の見返りもない「寄付型」ではお金が集まらないので「購入型」でないと成り立たないということはあるのでしょうが、「購入型」であっても、例えば映画制作のプロジェクトに対する資金提供への見返りは、何もチケットとかDVDとか通常商品として売買されるようなものに限らず、資金提供者の氏名をエンドロールに掲載するといったことでも立派なReward(報酬)になります。こういうところをみると、神社に一定額以上の寄進をされた方は氏名を鳥居に刻みますといったことと似ていますよね。

株式型の導入にみられるようにクラウドファンディングの資金調達手段の側面が脚光を浴びているのは、起業家・ベンチャー企業の資金調達に有効である点が着目されたことに加えて米国においても我が国においても経済の活性化のために起業家・ベンチャー企業支援を重視する政府の後押しがあったからでしょう。ただ、歴史的には古くから公益のための寄付や将来性のある芸術家などの支援するという善・美を大切に思う価値観が根底にあり、昨今のクラウドファンディングの著しい発展も一義的には綿々と続くそうした流れをくむものであって、より今風に解釈すればクールなこと・わくわくするようなことに自分も関わりたいというお金儲け以外の人間の欲求に根差しているという本質的な側面があることは理解しておいて方がよいと思うのです。(つづく)

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